「強度は足りているはずなのに、たわみ量が合わない」「他の鋼材と比べて計算結果がずれる」といった問題は、
ヤング率の扱いを誤っているケースが少なくありません。
本記事では、S45Cのヤング率を基礎から整理し、設計・加工の実務でどう使うべきかを明確に解説します。
S45Cとはどのような材料か
S45CはJIS G4051で規定されている機械構造用炭素鋼で、炭素含有量は約0.45%です。
強度と加工性のバランスが良く、シャフト、歯車、ボルト、金型部品など幅広い用途で使用されています。
S45Cの基本的な規格や位置付けについては、
S45Cの規格と機械的性質に関して解説で詳しく解説しています。
ヤング率とは何か
ヤング率(縦弾性係数)とは、材料が弾性変形する際の剛性の指標です。
応力とひずみの比例関係を示す係数であり、「どれだけ力を加えると、どれだけ伸びる(たわむ)か」を数値化したものです。
設計計算では、強度よりも先に変形量を評価する場面が多く、ヤング率は必須の材料定数といえます。
S45Cのヤング率の代表値
S45Cのヤング率は、一般的に約206GPa(=2.06×105N/mm²)とされています。
これは他の炭素鋼や一般構造用鋼とほぼ同等の値です。
| 材料 | ヤング率 | 備考 |
|---|---|---|
| S45C | 約206GPa | 常温・弾性域 |
| SS400 | 約205GPa | 一般構造用鋼 |
| SUS304 | 約193GPa | オーステナイト系 |
鋼材のヤング率は、炭素量や強度レベルが異なっても大きくは変化しない点が特徴です。
この考え方は、鋼材のヤング率に関して解説で体系的に整理しています。
なぜS45Cのヤング率はほぼ一定なのか
ヤング率は、主に鉄の結晶構造によって決まります。
S45Cはフェライト+パーライト組織を持つ炭素鋼であり、弾性変形の領域では組織差の影響をほとんど受けません。
そのため、焼ならし材、調質材であっても、ヤング率自体はほぼ同じ値として扱われます。
引張強さとの違い
よく混同されがちですが、ヤング率は「硬さ」や「強度」とは異なります。
焼入れ・焼戻しによって引張強さや硬さは大きく変わりますが、
ヤング率はほとんど変化しない点が重要です。
設計計算でのS45Cヤング率の使い方
S45Cのヤング率は、以下のような設計計算で直接使用されます。
- 軸や梁のたわみ量計算
- ばね定数の算出
- 応力集中部の変形評価
例えば片持ち梁のたわみ計算では、ヤング率がわずかに違うだけでも、
最終的なたわみ量に無視できない差が生じます。
そのため、設計初期段階でS45C=206GPaという前提を明確にしておくことが重要です。
熱処理はヤング率に影響するのか
結論から言えば、通常の設計範囲では影響しないと考えて問題ありません。
焼入れ・焼戻しにより組織は変化しますが、弾性域における剛性はほぼ同一です。
ただし、高温環境や塑性域に近い応力条件では、
温度依存や組織影響が無視できなくなる場合があります。
S45Cと他材料との比較で注意すべき点
S45Cからアルミや樹脂材料に置き換える場合、
ヤング率の差は設計に直結します。
例えばアルミ合金のヤング率は約70GPaと、S45Cの約1/3です。
同じ形状でも、たわみ量は大きく増加します。
単純な強度比較ではなく、「どれだけ変形を許容できるか」という視点で
ヤング率を比較することが、設計トラブルを防ぐポイントです。
よくある質問
まとめ|S45Cのヤング率を理解すると設計精度が上がる
S45Cのヤング率は約206GPaであり、
熱処理や強度レベルに左右されにくい安定した材料定数です。
この特性を正しく理解することで、
たわみ計算や剛性設計における不安を大きく減らせます。
強度だけでなく、変形まで含めた設計を行うことが、
S45Cを安全かつ合理的に使いこなすための重要な視点です。


