SCM435の引張強さを徹底解説|化学組成・熱処理・用途別性能まで完全ガイド

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SCM435の基礎知識|化学組成と鋼材分類
SCM435はJIS G 4055に規定される機械構造用クロムモリブデン鋼です。炭素量は約0.35〜0.43%、クロム0.8〜1.1%、モリブデン0.15〜0.25%を含む中炭素鋼で、機械構造用鋼として耐摩耗性、強度、靭性のバランスに優れています。
主要元素の役割:
- 炭素(C):硬さ・強度の基礎を決定
- クロム(Cr):硬度向上・耐摩耗性強化
- モリブデン(Mo):焼入性向上・高温強度改善
SCM435は正規化処理や焼入焼戻しを前提に設計されており、微細組織としてフェライト・パーライト構造が基本です。熱処理によりマルテンサイトやベイナイト組織に変化し、引張強さが大幅に向上します。
目次
SCM435の引張強さの目安
生材状態の引張強さ
SCM435の生材(圧延材・熱処理未実施)の引張強さは約600〜750MPaです。生材状態では切削加工性が高く、試作部品や低応力用途に適しています。寸法安定性や疲労耐性は熱処理後材より低いため、使用部位の応力条件に注意が必要です。
| 材質状態 | 引張強さ(MPa) | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| 生材(圧延材) | 600〜750 | 加工性良好、試作や治具向き |
| 正規化材 | 650〜780 | 組織均一、寸法安定性向上 |
熱処理後の引張強さ
SCM435は焼入焼戻しを行うことで引張強さが850〜1100MPaまで向上します。焼入温度は830〜860℃、焼戻温度は540〜620℃が一般的です。熱処理条件により硬度と靭性のバランスを調整でき、高応力部品に最適な性能を引き出せます。
| 熱処理条件 | 引張強さ(MPa) | 硬さ(HRC) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 焼入:850℃ / 焼戻:560℃ | 950〜1000 | 28〜32 | 高強度・適度な靭性 |
| 焼入:850℃ / 焼戻:600℃ | 1000〜1050 | 32〜36 | 硬度重視・耐摩耗性向上 |
| 焼入:850℃ / 焼戻:620℃ | 850〜900 | 25〜28 | 靭性重視・疲労耐性向上 |
熱処理条件の選定に関しては熱処理に関して解説で詳しく整理しています。
用途別SCM435の引張強さ目安
- シャフト・軸:850〜950MPa(焼入焼戻し後)
- ギア:950〜1050MPa(耐摩耗性重視)
- ボルト・ナット:850〜1000MPa(靭性と強度のバランス)
- 治工具:600〜750MPa(生材使用で加工性重視)
SCM435の引張強さに影響する要因
- 材料の化学組成:炭素量・クロム・モリブデンの割合で強度が変化
- 熱処理条件:温度・時間・冷却速度により硬度・靭性が変化
- 部品形状・断面寸法:細径よりも大型部品で硬度到達に差が出る
- 表面処理:窒化や浸炭により局所硬度が増加し引張特性も変化
SCM435の設計上の選定ポイント
- 生材使用時は加工性優先、応力が低い部位に限定
- 熱処理後材は高応力部品に適用し、疲労耐性を考慮
- 過剰な強度を求めると加工性低下・コスト増になるため、必要性能を明確化
- 耐摩耗性・靭性・強度のバランスを総合的に判断する
よくある質問
SCM435の生材と熱処理材では引張強さはどれくらい違いますか?
SCM435の生材(圧延材・熱処理未実施)は約600〜750MPaの引張強さですが、焼入焼戻しを行うと850〜1100MPaまで向上します。用途や応力条件に応じて生材・熱処理材を使い分けることが重要です。
熱処理条件によって引張強さはどのように変わりますか?
焼入温度や焼戻温度の設定により、SCM435の硬度・靭性・引張強さが変化します。例えば焼入850℃・焼戻560℃で950〜1000MPa、焼戻600℃で1000〜1050MPa、焼戻620℃で850〜900MPaとなり、用途に応じた性能調整が可能です。
SCM435の用途ごとの引張強さの目安は何ですか?
用途別では、シャフト・軸は850〜950MPa、ギアは950〜1050MPa、ボルト・ナットは850〜1000MPa、治工具は600〜750MPaが目安です。生材は加工性優先、熱処理材は高応力部品に適用する判断が必要です。
引張強さに影響する要因は何ですか?
SCM435の引張強さは化学組成(炭素・クロム・モリブデン含有量)、熱処理条件(温度・時間・冷却速度)、部品形状や断面寸法、表面処理(窒化・浸炭など)によって変化します。設計段階でこれらを総合的に考慮することが重要です。
まとめ|SCM435の引張強さを正しく理解する
SCM435の引張強さは、生材で600〜750MPa、焼入焼戻し後で850〜1100MPaが目安です。用途や応力条件に応じて生材・熱処理材を使い分け、設計段階で必要な性能を整理することが不可欠です。化学組成・微細構造・熱処理条件を理解すれば、設計や加工における過剰品質や失敗を避けることができます。

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